まるでそれはスローモーションのようだった。
突進してくる翔はあっという間に三浦君の懐に入り込み、ナイフを突き立てる。
だけど、その前に三浦君はあたしの体を押し自分から遠ざけた。
トントンっと横にずれたあたしの位置からはハッキリと見えた。
三浦君のお腹に半分ほど刺さったナイフ。
翔がグッと力を込めて、更にナイフを三浦君の腹部に深く刺し込む。
その周りから徐々に広がる真っ赤なシミ。
苦痛に顔を歪めながら三浦君はこちらに顔を向けた。
「……――逃げろ……――!!鈴森、早く、逃げろ……!!!」
「あぁ……三浦君……三浦君……いやぁぁぁっぁぁっぁああ!!!!」
髪をかきむしって大声で叫ぶ。
「三浦ぁぁぁぁっぁああああああ!!!絶対に殺してやるぅうぅぅぅぅぅうぅ!!!!」
翔の顔はもう狂気の沙汰としか言えなかった。
「くっくっく。どうだ、痛いだろ?俺を怒らせ、莉乃に手を出した罰だ!!!」
口の端からヨダレを垂らして叫び狂う翔は、三浦君が苦しむのを楽しむかのように三浦君の体からナイフを引き抜く。
刃先についた三浦君の血がポタポタとアスファルトにシミをつくる。
腹部を抑えた三浦君は低くうなりながらも「……バカ!!早く逃げろ!!」と苦痛に満ちた声で叫んだ。



