その顔は、いつもニコニコと柔らかい笑顔を浮かべた翔ではなく鬼のような形相であたしを見つめる翔だった。 「いいか、俺から離れるなんて言ったら絶対に許さない。お前は俺のものだ!!!」 「莉乃と一緒にいていいのは俺だけだ」 「市川には渡さない」 「三浦の野郎……。今度莉乃に指一本でも触れたら殺してやる!!!」 ダメだ……。 翔の怒鳴り声が徐々に遠くなる。 目をつぶるとぽっかりと空いた穴にまっさかさまに落ちていくような感覚にとらわれ、あたしは意識を手放した。