「うん。分かった。いいよ」

ニコリと笑いながら頷くと、彼は鋭い目をいくらか細めた。

三浦君に自分のラインIDを伝え、互いに友達登録をした。

たまにラインのやり取りをするだけの関係はすぐに終わるだろう。

隣のクラスというだけで、ほかに接点のないあたし達。

『好き』とは言われたけど、付き合ってくれとは言われていない。

三浦君はあたしと翔が付き合っているのも知っているし、気持ちを伝えてくれただけ。

付き合ってくれと言わなかったのは、三浦君がそれを望んでも叶わないことを知っていたからだろう。

この時のあたしの考えはあまりにも安易だった。

その先に何があるのか、この時はまだ知らなかったから。

この軽率な行動がのちに起こる恐ろしい悲劇のはじまりだった。

――あの時、深く考えずに彼とのラインのやり取りを決めてしまったあたし。

今なら、言える。

彼とラインしてはいけない。

彼に近づいてはいけない。

彼に関わってはいけない。

あたしの知らないところで、恐怖と絶望は音も立てずに忍び寄ろうとしていた。