恐愛同級生


「ふふっ。言われてみれば、そんなこともあったね」

懐かしさが込み上げてふっと微笑むと、桜も同じように微笑んだ。

あの出来事をキッカケにあたしは桜と関わることが多くなった。

『あたし、桜と同じ高校目指そうかな~』

受験の時何気なくそんな話をした。

もちろん桜は応援してくれたし、分からない問題があると根気よく教えてくれた。

こうやって今一緒に同じ高校に通えているのも正直桜の力が大きい。

塾の先生よりも桜の教え方の方がうまかったとすら思える。

同じ高校を受験するライバルの立場になっても桜のあたしへの態度は1ミリも変わらなかった。

『よかったらこれ使って』

それどこか桜が長い時間かけてつくった受験対策用のノートのコピーを取り、
それをまとめてあたしに渡してくれたりもした。

その気持ちが本当に嬉しかった。

『二人で絶対に合格しようね』

そう約束をした瞬間、桜との間に目には見えない確かな絆が生まれた気がした。

当時仲良くしていた友達には『市川桜としゃべって楽しい?』と呆れられたこともある。

もちろん答えは「YES」だ。

桜は何事にも一生懸命で筋が通っている。

こうと決めたら絶対に最後までぶれずにやり抜く。

みんなは桜のことを口うるさいって言って嫌っていたけど、あたしは桜が大好きだ。

高校入学後、中学の友達と会うとみんな口々に桜の悪口を言った。

『アイツと仲良くするとか、莉乃も落ちたね』

嫌な笑いを浮かべながらそう言った友達とはあの日以来会っていない。

誰がなんて言おうと、桜はあたしのかけがえのない親友だ。

誰よりも一番信頼できる人。

これから先もその気持ちは絶対にブレない。

「あたし、莉乃には感謝してもしきれない。莉乃があたしに手を差し伸べてくれなかったら、きっと今でも友達なんてできずにずっと一人ぼっちだったから」

「そんなことないよ」

「そんなことあるんだって。莉乃はあたしの恩人。だから、莉乃が困ったりしたら絶対に助けるから。あたしが絶対に」

「桜……ありがとうね……。心強いよ」

「だから、心配しないで」

桜はあたしの両手をギュッと握りしめながら大きく頷く。

好未が翔を狙っているかもしれないと聞いて、正直動揺した。

だけど、あたしには桜という強い味方がいる。

そう思うとほんの少しだけ心が軽くなった。