キーンコーンと鳴る予玲。

そのあと開けられた扉。

入ってきたのは、担任の岡野先生。

クラスメイトがバラバラと席に着く。

「よーし、お前ら今日も全員いるな」

簡単な出席をとり、手帳に書く。

そして次に言うのは、連絡事項だ。

今日もまた、くだらない内容なのだろう。

そう思っていた。

だが、今日は違った。

「えー、今日は転校生を紹介する!」

教室が一気に騒がしくなる。

それもそのはず。

転校生なんて、公立高校ならまずありえない。

いろいろな考えがめぐる。

成績不順、転勤、いじめ・・・。

そんなことを考えていると、

「入ってきてくれ」

転校生が中に入ってきた。

黒髪のさらさらした髪に、柔らかそうな笑み、身長も高い。

そのおかげで、爽やかに見える。

どっからどう見ても男だ。

私は目をそらした。

とくに興味はないので、耳だけで情報をえる。

「今日、転校してきた宮村楓君だ。皆、仲良くするように!」

「宮村楓です。クラス全員と仲良くなれるよう、よろしくお願いします」

透き通るような声。

そのあとに聞こえる、女子からの歓声。

男子からのあいさつ。

私は特に何も言わず、窓の外を見るだけ。

ガヤガヤしていたあとに聞こえてきたのは、岡野先生の声。

「宮村の席は・・・・・っと、月野の隣だな。・・・・・・月野、仲良くしろよ」

ドスの利いた声で言った。

もちろん、先生でも私のことは知っている。

クラスに馴染めていないことが、はみ出していることが。

何も言葉を返さず、そのままでいる。

あとから聞こえたのは、岡野先生の呆れた声と、ヒソヒソと話す声。

そして、上履きの音。

その音は、私の隣でピタリと止まり、続いて聞こえたのは、今日転校してきた宮村の声。

「よろしくね、月野さん。仲良くしよう」

ザワッとなる教室。

私は目線だけ彼に向けて言った。

絶対に言われたことのない、返事を。

「よろしく。でも―――仲良くする気は、ないから」

シン・・・、と静まり返る教室。

岡野先生のため息。

私は目線を窓の外へと戻した。

「あー、その、これで朝のHRを終わるぞ」

そう担任が言った瞬間、席を立ち騒がしくなる教室。

話し声が聞こえる。

宮村と男子と女子の声。

私は全てを無視して、ずっと窓の外を見ていた。