男子達を振り切り、やっと有村の元へ行けた俺は有村に声を掛けた。
「有村。」
「柴崎くん?」
俺の方を向く有村は、大きな瞳に涙を溜め込んでいた。
「試合は?途中でしょ。」
「試合なんかどうでもいい。行くぞ」
俺は手を差し伸べた。
保健室に連れて行こうと思ってたからだ、
「保健室?」
有村がそう問うと、俺は頷いた。
「頭打っちゃった所見てたんだ。やっぱ冷やさないといけないよね。」
有村は俺の手を借り、立ちながらそう言った。
恥ずかしそうに、笑う有村。でもそこが無理をして笑っている感じがして、後悔が出てきた。
何で有村を守れなかったんだろって。
「じゃあ、保健室行ってくるね。ありがと。」
有村は1人で体育館を出ようとした。
でも、俺は手を離したく無かった。


