横から見ていた俺はわかっていた。

木下は取り巻きにパスしようとして誤ってボールを有村に当てたわけじゃない。

有村に向けて強く投げ付けていたたという事を。


座り込んだ有村の元に木下が「ごめんなさい」と棒読みな謝罪を入れてきた。


俺は木下に対する怒りを抑えつつ、試合を投げ出した。

「ちょっと、柴崎!どこ行くんだよ」

「ごめん」


俺はそのまま女子のコートの、有村の方へ向かおうとしたが、他の男子が俺を止めようとする。


その間、有村は木下に抱かれた後、1人で壁ぎわへ座り、木下は平然と試合に戻っていった。