キス・・・したの?
私たち・・・・


反射的に口を両手で押さえて、顔を上げると、彼もさっきより少し離れた位置から、私を見ていた。


寝てる間にキス、とか・・・


しかも、亮太、いたんじゃないの・・・?



「り、亮太は・・・?」


「大丈夫です、見られてないんで。」


「そっ、か」


「・・・安心しました?」



首を傾げて、私の顔を覗き込むように、彼は訊いてくる。


安心・・・・?

あれ?

私、今、一瞬

見られてなくて、残念って、

思った・・・・?



「それとも、残念って、思いました?」


「えっ!?」


「図星ですか、本当、分かりやすい」



また、三木くんが優位になった。

余裕のある口調と、まるで感情が読めない顔で、彼は続ける。



「それって、あいつを妬かせたかったからですか?それとも・・・・」


「・・・・・・・っ!」



また、耳元に吐息がかかるくらいまで顔を寄せた。
突然のことに、私は固く目を閉じる。



「あいつと別れるきっかけが欲しかったから、ですか・・・・?」



彼は、自分の声の扱い方をよく分かってる。
そんなふうに囁かれたら、心が動いてしまっても、仕方ない。

不思議と、身体中の力が抜けていく。

こくり、と無意識に頭は縦に揺れていた。
なんだか、後者に、酷く納得できてしまったから。



「俺も、少し、勘違いしていいですか?」



その言葉を合図に、頬に熱が走った。

その熱の元は、彼の、唇。

頬に口付けされたのなんて、初めてだ。


それから彼は、耳から首筋にかけて、数回、触れる程度のキスを落としていった。
彼の唇が、私の肌に触れる度、その箇所が熱を帯びはじめる。

そして、今度、彼の大きな手が私の頬を包んだ。



「目、閉じてください」



あともう少しで、鼻がくっつきそうな距離。
これは、間違いなく、キス・・・される。

彼とのキスは、これで二度目になるのか。

でも、私にとってはこれが、一回目みたいなものだ。

彼の視線にやられて、少しでも緊張が緩和するかと、大人しく目を閉じる。

けど、視界が真っ暗になったことで、彼が今、どれくらいの距離で私を見ているかが分からず、余計に緊張してしまった。

完全に、逆効果だ。


でも、彼の顔がじりじりと近付いてきている気配は察した。

私の唇の数センチ先から、彼の吐息を感じて、あともう少しで唇が触れる、と、ぎゅっと、より強く目をつぶる。