「ミカ、行こう」


「うん!」


屈託の無いミカの笑顔。そして……


「さぁ、柴田さんも……」


「いや、俺にはまだやる事がある。ケンジ、俺の指輪、届いてるだろ?」


指輪……俺は頷くと、自分が閉じ込められていた部屋に戻り、例の封筒を持って来た。

もちろんこの中には、彼の指も入っているわけだ。

それを渡すと、柴田も一言……


「ありがとう」


と残し、隣接した部屋の鍵を開け、中に入って行く。

俺はその瞬間、柴田ともこの先永遠に会う事がないのだろうと悟った。

その部屋の中に、一瞬ではあるが、白骨化した遺体の様な物が見えたのだ。

恐らくあれが、柴田の愛した人間だろう。