平岡は俺達に背を向け、個室のドアに手をかけた。


「おい、平岡さん。どこ行くんだよ」


「頼む。少し、そっとしておいてくれないか……」


聞こえるか、聞こえないかぐらいの声で呟くと、平岡は部屋に入った。


元々俺も今の平岡と同じで、生き甲斐も無く生きて来たから、平岡が今どんな気持ちでいるのかは解る。

もう彼と出会う事はないだろう。


「ケンジ。終わったな」


「あぁ、全部。……全部……」


恐らく平岡の率いていたこの組織は、元々個々の思惑で動いているのだろう。

だから、平岡がいなくなった今、俺達に狙いを絞って行動する人間はいなくなるはずだ。

全てが終わったのだ。