この運命を奇跡と呼ぶならば。


「…ほんとは、私、未来に帰りたいのか帰りたくないのかよく分からなくなってきてて…」

斎藤はどうしたらいいものかと困った様子で黙って頷いた。

「そりゃ、未来に帰りたい…。でもっ…ずっと此処に居たいって思いも在って…わからない、どうしたいのか自分でも。…それに私は未来に待ってる人がいる。私にはいつか帰るべき場所へ、帰る日が必ず来るから。」

桜は二つの相反する想いに戸惑うようだった。

「…俺には、どう言えばいいかはっきりとは言えん。だが、焦ることはないんじゃないか?お前はお前の早さで答えを見つければいい、俺はそう思う。全ては、お前次第だ。」

「一…、そうよね。焦ることはない、か。いつもありがとね。」

斎藤は少し黙って慎重に口を開くと穏やかに微笑んだ。そして桜も、微笑みを返した。

「…桜、悪かったな。」

「え?」

「いや、なんでもない。そろそろ部屋に戻った方がいいぞ。」

「変な一。」

斎藤は不思議がる桜の背中を押して外へやると少しだけ寂しそうに笑った。