桜は軽く返事をして斎藤の後ろを大人しくついて行く。
「ねぇ、一。土方なんか言ってた?」
「…いや、何も。桜、副長を呼び捨てにするな。せめて、『土方さん』とお呼びしろ。」
「いやよ。一ってほんとに土方への忠誠心、凄いわね。」
感心したように桜が言うと、斎藤は右に差してある刀を撫でながら言った。
「俺は、左利きだ。右差しの武士など有り得んのだ。両親にも右利きに直すように幼い頃から言われ続けてきた。だが、局長と副長。そして、新選組の皆は左で剣を扱う俺を受け入れ“仲間”と呼んでくれた。」
普段は無口で沈黙を破ることなどほとんどない斎藤がいつになく饒舌に熱く語る様子を桜は黙って聞いていた。
「…そう、か。あいつ等はこの私にも刀を握らせてくれる。本当なら、私のような者が刀を握ることなんていけないのに。」
桜も言葉を噛み締めながら斎藤に同調する。
「俺はあの方を尊敬している。だからこそ、死んでもあの方の側にいて命にかえても守り抜く。なぜ、あんたはあの方を呼び捨てにする?」
