この運命を奇跡と呼ぶならば。


「私は、それでもいいですよ。」

「山南さん…本当にいいのか?」

そう言いながら山南さんはいつもの定位置に座ると、桜を見て微笑んだ。


「私は本当なら、死ぬはずでした。…死ぬことに恐怖はありませんでしたし、武士になった時点で死は覚悟のうえでした。死と隣り合わせで…右手が使えなくなってからは絶望するばかりでしたから。ですが、“生きる”と言う希望を与えてくれた。生きている事が奇跡ですから。」


「山南さん…」

今まで黙っていた桜は感激したように、山南さんの名前を呟いた。


「私の兄は、春は今まさに、死と隣り合わせです。そんな風に“生”を思っていればきっと、春も喜びますよ。春も“生きる”ということをずっと大切に思っていましたから。」