城跡に咲く花〜使用人×王女〜

「……妹姫さまはみなに託してきました…。命令を違えてしまって申し訳ありません…」

グレンはユリアに真剣な眼差しを向けた。

ふたりとも床に座り込んだまま、血や煤で汚れた顔のまま見つめ合う。

「けれど姫さま…、あなたにどうしても伝えたいことがあったんです……」


「……伝えたい…こと…?」

ユリアは震える声を零した。

グレンの瞳がひた向きすぎて、視線を逸らせない。


「…ユリアさま、……あなたが大切でした…。ずっと、ずっと……」


まっすぐに紡がれた言葉に、ユリアはただ瞳をみはった。

思考が止まり、身動きどころか瞬きひとつできない。


「……出逢えて、幸せでした…」


深い深い想いが込められた言葉。