「拓海くん…」



いつの間にか私は無意識に名前を呼んでいた。



「お願い、目を開けて」


かすれるような声しか出ない。



「拓海くん、もう一度私を見て笑ってよ」



握っていた手が。



本当に冷たく、硬くなってきて。



私の手まで冷たくなってきて。



もう。



もう二度と。



この手で私の手を握ってくれなくなって。



あの優しい目で私を見つめてももらえなくなって。



この、鍛え上げた腕で私を抱きしめてもらえなくなった。



「拓海くん…」



そう呼んでも、もう二度と。



『真由ちゃん』



って。



名前も呼んでもらえない。