トーガから手を離して眼鏡を拾い上げる。 レンズが綺麗に割れている。フレームは曲がっていないけれど。 「どうぞ」 「ありがとう、…じゃなくね? あー俺の眼鏡、可哀相に」 「クラギをそこら辺の女と同じように扱うと、噛みつかれますよ」 なんて言い草かと思う。 気にはしない。 そんなじゃれあいをしていると、チャイムが鳴った。話の中に出てきた何とかちゃんと何とかだろうか。 トーガが玄関の扉を開けてきた。時計を見れば日付を跨ぐ寸前。 「うわ、ごめんね」 女っぽい女。