なに? じゃないことは重々承知だけれど、一応聞いてみた。


「いや、君が帰る、なんて言うから」


その腕が完全に下ろされる。


「少し嬉しくなった」


にこにこと、そう宣ったわけだ。
勝負もしてない内に勝利宣言をされたみたいで言いたいことは沢山あったけど、喉の奥に押しやった。

あたしは「うん」とよく分からない頷きを返して、駅へ向かう。

そこにはやはり異色の小学生。


「卯月」

「あ、姉ちゃん来たんだ」


遅くなったからか、小学生はあたしが来ないと思っていたらしい。