視線だけを向ければそこにはこの前の男、タチバナが立っていた。 初めて声を聴いた。 「わざわざ連れてきたの?」 鞄を肩にかけて教室を出る。 「何言ってるんですか、クラギと同じクラスですよ、ね?」 「ああ」 「は?」 タチバナと同じクラス? 次は口を噤む。ミカミがクスクスと笑っているのが分かった。 うざい。 タチバナは廊下を歩いていく。 「別に一緒に帰らなくて良くない?」 「キミがどこかの野良犬に食われると困る」 食われるわけがない。 もう反抗するのも面倒だけれど。