だからこそ、気持ちが悪い。
向けられた笑顔も敬語も、その優しさの押し売りのようなライターでさえ。
「ここに戻ったら教えましょう」
敬語な割に、上からだ。
堅気じゃない。でも本職でもない気がする。
とんとんと隣を叩くそこは先ほどまで座っていた場所。躊躇、なんてものは要らない。
あたしはそれを選ぶ必要がなかったから。
ライターもコンビニで買えるし、この男のこともコウヅカに聞けば教えてくれるはずだ。
こいつからはコウヅカと似た匂いがする。
「強情だ」
呆れたように笑って、男は煙草を地面で消した。
それをきちんとケースの中にいれる。



