ぐに、と頬に爪が食い込んだ。 痛い。 「馬鹿」 「…君にそれを言われるときが来るとは」 「お前が言ったのに。家族だって」 彼女をこちら側に引き込んで、最初の方に言ったこと。 懐かしい。それを覚えているなんて。 「トーガがお母さんで、タチバナがお父さん、タクトが爺さんで」 「君が娘で?」 「ミカミがその旦那なんでしょう?」 腕が首の後ろに回って抱き寄せられる。 彼女の細い鎖骨の窪みに耳が当たって、鼓動が聞こえた。