振り上げた警棒を振り下ろす。 「…っ」 ざくり、と刺さったのはミヤシタの耳の横。 水でよく見えないけれど多分貫いてはいない。 はあはあ、とお互いの呼吸音だけが暫く煩く聞こえた。 半分浸かっていたミヤシタも上半身を斜めに起こす。 そしてあたしを抱き締めた。 こんなに相手の温度が伝わると温かく思えて、今ここがどれだけ寒いのかが分かる。 全身びしょ濡れだからどちらも低体温なんだけど。 ミヤシタの持っていた鉄パイプはどこかに沈んでしまったようで、もう見えない。