その感触を確かめて、ぬくぬくと暖かいのか首を竦めて初めて微笑む。
「ありがと」
「いーえ。今日も遅くまで残んの?」
「うん。家、女のひと来てるから」
「女?」
「おじさんの、知り合いのひと」
複雑な家庭事情ってやつか。
膝に頬杖をしながら聞く。
「おじさん、優しい?」
「たぶん」
淡白な答え方。
スケッチブックが仕舞われた。
「姉ちゃんは、ここで何してるの?」
「暇つぶし」
「ふうん」
あたしはなんとなく、この時から、この小学生を救ってあげたいと思っていた。
救ってあげたいと思いながら、あたしでは救えないことを誰よりも知っていた。