実家に帰ったのかもしれない。偶に呼び戻されることがあるし。
「マンション帰る。居るかもしれないし」
「ん、最近なんかここら辺不安定だからな。気を付けて」
「気を付けて避けられるなら避けたいもんだわ」
治りかけていた瞼の上の傷を少し撫でる。
体育の時の悪寒を思い出して、嫌な不安が心を煽いだ。
部屋の中はすっからかん。あたしの部屋にも、ミカミの家具の少ない部屋にもトイレにも風呂場にも居ない。
携帯とやらを嫌わずに持っておけば良かった、と初めて思った。
それか、いつしかのネックレスを巻きつけておくとか…。



