Golden Apple


人の居た駐輪場からいつの間にか人が捌けていた。

でも、ギャラリーは増えていた。

ミヤシタが何か言っている。何を、何を言っているのか。


「クラギ」


耳元で名前を呼ばれた。音無く後ろを取られるなんて、不覚だ。

同時に視界を奪われる。

自分の肢体が動きを止めたのを感じた。

ずるりと足が後方へ滑る。そのまま引きずられていた。


「トウガ、後はお願いします」

「了解」


あたしの視界を奪っていた手が降りて、一瞬見えたのは黒縁メガネ。

後ろにいるのは見なくても分かる。
ミカミだ。