リサの視線がタチバナからあたしに移る。
「今、レナコのこと言った? あんたが言った阿婆擦れって、レナコのこと?」
「そうだけど。あの女だって、男誑かして金集ってるじゃん!」
ぷちんと、何かが切れた。
思えばそれは約束の線。
細くて毛糸みたいにふらふらしていて、火を点ければよく燃える。
一瞬にして、炭と化す。
乾いた音。リサの横面をぶん殴った。殴ったといっても平手打ちだ。
拳じゃないだけ有り難く思え。
「…にすんのよっ!」
パンッとあたしの左頬にも熱が籠もる。それでもたかが女の力。
あたしが殴ったのより全然痛くない。



