手に納まるそれをくるりと回す。 「なに、これ?」 「無線代わりに。電源を入れると他の電源が入っている電話から会話が聞こえます」 「すごい」 どうやって作ったのだろう。 電源の入れ方が分からなくてミカミにもう一度渡す。 「普通にここです…って、もしかして携帯持ったこと無い?」 「うん。時代遅れだって?」 「いえ、連絡をつける手段がないなと思ったんですよ。それこそ迷子になった時とか」 それが返ってくる。 あたしはそれをパーカーのポケットにしまってホテルのロビーの壁に寄りかかる。