「姉ちゃん、家族でどっか行ったことあった?」


小学生が足をブラブラさせながら訊く。

あたしは煙草を咥えて、火は点けないままでいる。駅の改札の向こう側をぼんやりと見ていた。

家族で、とつくものには無縁だった。

コウヅカの家に行ってからもコウヅカ以外の人間とはあまり馴染める気がしなくて、どこかバリアを張っていた。

親というものに不信感というか、血が繋がっていようといなくとも、一人の人間として見るようになっていた。


「…ないな。卯月は、あんの?」

「ない。母さん達忙しいみたいで」

「ふうん」