何を考えてるのか分からない眼。
それをじっと見据える。
「死んでしまった人間のことは分からない」
「兄のこと?」
聞くけれど、返答なし。
沈黙は金、雄弁は銀だと、誰かが言ったのを思い出す。
「何が知りたいのかは分からないけれど、あたしが知っていることも少ない」
「クラギ」
「だから、なに?」
「キミのことを呼んだつもりはないです」
落胆。あたしが、だ。
そこに突っ込むなんて興ざめだ。いくら主人だろうと、それはない。
「双子の兄。あたしとはあまり似てなかったから、二卵性だったのかもね」
それくらい、と手を離した。