「たまにここへ帰っていたんですよ。あとは、マンションに」 「は? マンションに居ない時にここに居んじゃないの」 「他のマンションですよ」 ぽかんと口を開く。 こいつ、何? ただの策士じゃないとは思っていたけれど、御曹司? 坊ちゃん? 信号で止まってあたしの方を向いたミカミが笑った。徐にこちらに手を伸ばして、唇の端に触れられる。 びくりとそれから距離を取る。 なに、急に。 「お前、いくつマンション持ってんの?」 「さあ? 必要なだけ」 必要なだけって。 いつか言ってみたいもんだ。