魔性のクセにそれを匂わせない。気取らない。でもきちんと掴む。 しかも本職にまで手を出している。あたしは今まで、夜の仕事をしている女の中でも、ここまでする奴は見たことがない。 コウヅカの所に居た頃、顔をぐちゃぐちゃにして帰ってきたことは一度や二度じゃなかった。 それが涙なら問題は無い。 「どしたの、クラギ?」 「レナコ。最近、タケウチって男見た?」 あたしの前で振られていたレナコの手が止まる。 涙ではなく、その可愛い顔が、目が、口が、血塗れになったのを幾度も見た。 「見たよ」