「それはコウヅカの命令だからですか」

「いや、今の主人は違うらしいし」


くるりと回転しようとしたら椅子の背を持たれて止められた。


「あたしは暴れられればそれで良いから。上手く使えば? ゴシュジンサマ」


組んだ脚の上に頬杖をつく。ミカミは椅子から手を離さない。近い距離のまま、口を開いた。


「前に良くしていた人間にもですか」

「うん」

「いいですね、気に入りました」


笑顔が一層深くなる。見間違いではない。

貼り付けた笑みより、それはもっと冷たいものだったけれど。

あたしはそれを嫌いではなかった。