トーガとは少し離れた向こうのソファーに座っているのはタチバナだった。そして、その正面に、
「だから、」
「お兄ちゃんにそんなこと言われる筋合いない!」
ガッチャーンと、テーブルから何かが落とされた。グラス…あたしの唯一のグラス。
百均とはいえ結構愛着が湧いていたのに。
今の会話からその女はタチバナの妹だということが分かる。分かるけれど、こっちも女だからといって黙っていない。
ミカミを押しのけてリビングへ入ろうとする。寸前で、トントンとわざとらしくノック音が立つ。
その場に居る人間みんながそれに注目した。



