十対一で勝てても、次は五十に増えるかもしれない。
喧嘩の勝敗を決めるのは、どんな美学を持っていたって、質より数になる。
「クラギはこんなでも女の子なんだから」
「こんなってなに」
「君はいつもズレた所に突っかかってきますね」
クスクスと笑う。
ということで、あたしも納得した。
バイトは諦める。ミカミの言ったことは尤もだと思ったから。
こちら側では新人のあたしがデカい顔をしているのが嫌な奴だって沢山いるだろう。
信頼を得るのには金は要らないが時間が充分に必要だと、コウヅカが言っていた。
マンションへ帰って鍵を出す前に、ミカミがドアノブに手を掛ける。



