「…何でかねー?…それと、お前はひとつ勘違いしてる。」

「……え?」


ニシハルはお菓子の袋を開けて、ウエハースを取り出すと……。


それを半分に割って、パクリとひと口食べた。


「これは、俺が常備してる唯一の菓子だ。」


彼が自分の机の引き出しを開けると……



なる程。
確かにビッチリと…入っている。


「…誰もお前の顔見てあげようって思った訳じゃねえよ?真面目に旨いからさ、だからあげたってだけで。」


「…………は?」


「それに。寝てりゃあ注意するのはトーゼン。どっちが悪いのか、そのカタ~い頭でよっっく考えろ。」


貴方はそう言って。



もう半分、手にしていたお菓子を…
私の口に当てた。



「……これを食べれば、頭やわらかくなるぞ?…でもって、成績も鰻のぼり。……そう思って食べると…、癖になる味だ。」



こんな子供だまし…

……なんて思ったけれど。


口に当てられてしまったものを捨てる訳にもいかずに…

パクリ、と。

それを口に入れる。



ニシハルは……


「……かわいーとこあんじゃん?」


私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。


「……やめてください。髪が乱れます。」



あら……?

あらら?


意外に…、おいしい?


「………。旨いか?」


「………はい、案外。」


「案外だあ?(イラッ)」


「いえ、結構。」


「……変わらねーじゃん?」


「…………。」




「ま。話はそれだけだ。…次はお前の好きな生物だろ?早く行った行った。」



優しいと思ったら急に突き離したり……。



よくわからない人……。



「……。失礼します。」





職員室を出て。

私は……、ふと思う。



ニシハルが考えていることは、よくわからなかったけど。


彼がくれたお菓子の味は、

なんとなくだけど……

本当に、おいしかったような……?



『癖になる味だ。』

彼がそう言った言葉の意味を……、


まだ、知るよしもなく。

ドアの向こう側で、飄々としているでだろうニシハルの姿を…思い浮かべながら…。

その場を…

去ったのだった。