一仕事終えて頭が冷静になったのか、急に床の冷たさを覚えて私は立ち上がった。


窓際までとぼとぼと歩いて近づく。


そしてキラキラ光る街を見下ろして、思わず声がでた。


「うわ、雪だあ!」


白い小さなものが沢山空から降ってきていたのだ。


ーホワイトクリスマス、ねえー


カップルが喜びそうなワードだ。
特に女子。


私はどうしても、このささくれた気持ちを捨てることができなかった。


だって今夜は雪降る素敵なクリスマスイブ。


これでも私も恋人と過ごす予定でいたのだ、つい夏頃までは。


それがどうしてこんなことに。


一つしかつけていない蛍光灯の薄暗いオフィスで、ぽつんと窓際に一人立って。


彼氏がいないことを嘆いているだなんて、ほんとにバカみたいだ。


『前よりもっと小顔になったな。
いいじゃないかイメチェンだ、 今日からはそれがお前、だろ?』


その時ふとある人を思い出して、寒い部屋の中なのに身体が熱くなった。


黒髪ロングだったのをショートにしてブラウンに染めた私を見た時の岬課長の言葉だ。


髪を切った理由がとても不純であると知ってか知らずか、滅多に笑わない彼が珍しくフワリと微笑んで私を見つめて言ったのだ。


ずっと憧れていた人とやっと想いが通じたと思ったら、元カノに掻っ攫われるという超マヌケな自分への戒めだというのに。