あたしが無意識に千秋さんを目で追っていることに気がついて、向こうから別れを切り出してくれるくらい。


彼には申し訳ないことをしたな、と今でも思っている。


だけどあたしは千秋さんへの気持ちを隠すことは出来なかった。


……それに、あたしなんかが心配しなくても、優しい彼はやっぱりいい人だから去年結婚したとメールがきた。


今年なんて子供が産まれたと年賀状がきて、彼によく似た男の子だった。


千秋さんへの思いを隠して彼の手をとっていたら、違う人生があったかもしれない。


……それでも、あたしはこの思いを大切にしたかった。


千秋さんと、千冬くんを守りたいと思うこの気持ちも。


ーーブー、ブー


その時、カバンの中でバイブレーションが響いた。


恐らくスマホだろう。


取り出して画面をスライドすると、一通メールがきていた。


『愛しい弥生ちゃんへ

今日は馬鹿息子のせいでイブが潰れて最低でした。飲み会も行けなかったし。

でもサンタは私を見放してなかったみたい、最高のプレゼントを手に入れました。
弥生ちゃんも頑張って。

愛する舞ちゃんより』


相変わらずおちゃらけた文面だ。


電車の中なのに思わず笑ってしまいそうになった。


賢くてジョークの上手い舞。


プレゼントってなんだろう、そう思っているとメールにはまだ続きがあることに気がついた。