彼とわたしはさっきから一番後ろの席に座って 手をつなぐわけでもなく、お互いの指でお互いの手の熱を確かめあっていた。 足元に来るバスの温風の熱がなんだかくすぐったかった。 外の寒さなんて、この車内の暖かさを知ると なんだか嘘のように感じてしまう。 でも、バスを待っていたときの寒さがまだ鼻の先には確かに残っていて、 わたしはマフラーに鼻をうずめる。 幸せだ、とわたしは思う。