「これ、マジで臭いんだけど!どうにかならないの?」


「そんなにイヤなら公民館で洗って来いよっ」


吐き捨てるように言う八神をギロリ睨むと、あたしは防波堤から飛び降り、道路を渡って公民館へと向かった。


公民館の手洗い場で、あたしは石鹸で手を念入りに洗った。


思わずはぁとため息が漏れる。


八神が悪いのよ。


手なんか握ったりするから…。


ジャーッという水音が、館内に響き渡る。


付き合ってるだなんて、あたしと誤解されてもいいって言ってるようなモンじゃない。


それなのに恋愛対象じゃないって、何よ?それ。


あたしは八神の何なの?


湯本さんと距離を置くための都合の良い道具?


男友達みたいなもの?


からかうのが面白いだけ?


「八神のばーか…」


そっと呟いて、あたしは水道の蛇口をキュッと閉めた。