凪とスウェル

なつかしい味だった。


子供の頃、俺が風邪をひくと、決まってこの組み合わせを用意してくれていた。


ふんわり玉子の入ったおかゆと、ネギとしょうががたっぷり入った味噌汁。


風邪の時には白ネギとしょうががいいんだって、いつもそう話してたっけ。


じいちゃんも風邪の時は同じことをしてくれていたから。


多分じいちゃんの代から受け継がれていることなんだろう。


気がつけばあっという間に完食し、また布団に横になった。


「長谷川さんと杏(あん)ちゃんは大丈夫なのか?」


ふと気になって聞いてみた。


「そんな心配しなくていいのよ。
杏ちゃんももう幼稚園の年長さんよ。もうすぐ一年生になるんだから。随分しっかりしてきたわ」


杏ちゃんも、もうそんなに大きくなったのか…。


しばらく会ってないよな…。


「今日はなんだか胸騒ぎがして…。それで隆治に電話したの。

電話が繋がって良かったわ。

こんなに熱が高いんじゃ、明日は仕事はお休みしないとね」


母親の言葉に、ピクっと眉毛が動いた。


「休めるわけねーじゃん。俺一人しかいないのに」


俺が休むってことは、店を開けないってことだからな。


そんなの許されるはずがない。