とは言え、今日は真夏日だ。


帽子を被っては来たけれど、陽射しが強くて、うだるように暑い。


ちょっと休憩しようかと、右京君の合図であたし達は日陰のベンチに腰掛けた。


ここから見る山の景色は綺麗で、吹く風も気持ちが良い。


「おい、サエ」


突然隆治が、右京君の彼女を呼び捨てにした。


それが意外で、あたしは目を見開いた。


「これでなんか、みんなに飲み物買って来てー。俺、炭酸がいい」


そう言ってお札を差し出す隆治。


「はぁ~、隆治はもう!人遣いが荒いわねー」


サエちゃんが気だるそうに立ち上がる。


「サエ。俺はお茶にしてー」


右京君もまるで女房に頼むかのような言い方だ。


6人分を一人で買って来るのは大変なのに、なんでサエちゃん一人に?


そう思ったらあたしは、変なスイッチが入ってしまった。


「ちょっと、長谷川君!」


「な…に?」


隆治が驚いた顔で、あたしを見ている。


「右京君がサエちゃんに頼むならともかく。

なんで彼氏でもない長谷川君が、サエちゃんにそんなこと頼むのよ!」