「光玉はもうありませんが大丈夫です。貴方様のご活躍に期待してこれ以上の乱れがないことを祈っておりますから。」

「おーおー、プレッシャーかけてくんな~。」

エプレットの言葉に苦笑いをしたのは貴未だ。

その反応に満足したのか不敵な笑みを浮かべたままさらにカルサに向かってきた。

「敵地で旗を掲げてきてください。勝利の合図を。」

強く拳を握る様は勝利を信じて疑わない強さがある。

それは窮屈に縛られすぎていたカルサにとって初心にかえるような新鮮な風を吹かす威力があった。

「行け、カルサ。」

サルスの声がさらにカルサの背中を押す。

「少しの時間も惜しいだろう。この国は大丈夫だ、すべて任せて先に進め。」

「サルス。」

「全部引き受けた。」

圭の手から離れたサルスはおそらく治療が終わったということだろう。

まだ完全に取り戻せていない体力を振りしぼって身体を起こせば、すかさずレプリカが手を貸し支えた。

それは当然のように動いた流れで二人も目を合わせて微笑みあう。

再び向けられた目に大丈夫なのだという優しさと強さを感じられてカルサからも笑みがこぼれた。

大丈夫なのだと。

「ありがとう、この国を任せた。」

カルサのこの言葉に頷いたのはサルスだけではない。

頭を下げるもの、微笑むもの、手を掲げるもの、様々な形で答えて頷いてくれたのだ。

だからこそカルサもすぐに立ち上がれた。

「行こう。」

旅立つ仲間がそれぞれに応えて国に背を向ける。

そして再びカルサたちは旅立ったのだ。