自分は神官であった玲蘭華の息子、そして皇帝の力を持つ唯一の人物だったカルサトルナスだ。

ウレイの生まれ変わりであるこの身体が生を受けた時に玲蘭華によって魂を融合されたカルサ・トルナスだ。

全ては玲蘭華の思い通り。

玲蘭華は太古のあの時ではなく今、この時代にスターレンが現れるのを待っている。

この時代こそがヴィアルアイを倒す時だと狙いを定めているのだ。

「…狂っている。」

その言葉に尽きた。

まさかという思いと有り得なくもないという思いが交錯する中でたてていた予想が的中している、やはり事の始まりはとても単純な感情だ。

くだらない争いの成れの果てだといつかリュナに話したことは間違いではない。

あの時よりも幾分か歳を重ね経験を積んだ自分が考え直してもやはり納得がいかなかった。

どうしてこんなことが出来るのかと。

そして魂にすら残る玲蘭華の欠片に己の行く末を恐怖にも思えるのだ。

自分も玲蘭華と同じ道を歩むことにはならないだろうか、繰り返すのだろうかと。

そして日向を見るたびにも不安に襲われる。

状況は随分と異なる、環境だって違う、性格も捉え方も違うだろうが否定しきれないのは血の繋がりがあるからだった。

「早く…終わらせないと。」

その責任がある。

「次に導いてカラクリを壊さないと。」

でも出来るだろうか。

日向は受け継いでくれるのだろうか、その為には二人の関係を話さなくてはいけない。

上手くいく保証なんてどこにもない、繰り返す確信だって誰も持ってはいないのだ。

あるのは全て恐れと不安。

「前だけ見て進んで下さい。」

界の扉の間で千羅と瑛琳に告げられた言葉が頭を過る。

「…リュナ。」

いま手を繋ぎたい相手がいるのは幸せなことか問うが、全てのしがらみを捨ててそうだと頷きたい。

そう思える自分がいることにカルサは僅かな幸福を覚えた。