あの時も彼を探していた。

二度の襲撃を受けて二人の結界士を失い国の標である占者も失った。風神を奪われ、次は参謀をも奪われようとしている。

城内を歩きながらカルサは抱えきれそうにない憤りに襲われて拳を握りしめた。

この不運は生まれ持ったものなのか、それとも誰かの陰謀か。

陰謀だとしたら何故カルサを狙うのか。分かっているようで分かっていなかったのかもしれない。

明らかになった真実の一つにかつての婚約者がヴィアルアイ側にいる事があった。それは太古の国での淡くも苦い思い出だ、つまりは精神的な攻撃が狙いなのだろうか。

だとしても何故カルサなのだろうか。

血を分けた実の弟は火の力を持ってカルサの前に現れた。しかし彼にも、彼の周りにも彼に関する記憶は残されていない。確かなのはカルサの中の記憶と日向の中の唯一の記憶である名前だけだった。

失われたもの、失いつつあるものが多い中、現世でカルサに与えられたものは新しい身体と光の力。そして新しい仲間だった。

もう、これ以上何も失うつもりはない。

「サルスを見なかったか?」

カルサは廊下ですれ違う際、脇に避け頭を下げたままの女官に声をかけた。カルサは今、自分の仕事を行なおうとしている。

「先程、民の部屋に向かわれました。」

「民の部屋か。」

あそこにはまだ避難してきていた民が居たはずだと頭の中で思い出す。カルサは礼を言うと民の部屋に足を向けた。自然と歩みが早くなる。

会って何を言おう、何から話せばいいのだろう。そんな余計なことも一切考えずに歩いていく。

あの時も彼を探していた。

なかなか探しても見つからないので声を上げて手っ取り早くサルスを見つけようとした。あいにくと今はそんな気にはなれない。

あの頃が懐かしいと目を細めてしまうほど時は経ってはいないのに。そう感じてしまうのは短い期間で色々な事が起きたからなのだろうか。