御劔 光の風3

「何もかも背負い過ぎです。それで何が変わるんですか?自分の命を懸けてヴィアルアイを倒して、一体何が変わるんですか?」

千羅の声に力が入った。それでも反応を見せないカルサに苛立ちが加わり千羅の身体に力が入る。声を張り上げ千羅は思いをカルサにぶつけた時にはカルサは閉じていた目を開く。その瞬間をレプリカは黙ってみていた。

「昔は知らない、でも今のヴィアルアイは皇子を苦しめる愉快犯になりつつある。そんな奴を倒して世界が変わる!?俺にはそうは思えない!」

言葉遣いを選ばない千羅の声が強く部屋中に反響する。

「世界なんて関係ないところで事が終わるだけじゃねえか!」

「黙れ…!」

強い強い千羅の思いが叫び声になって外へ出ていく。冷静さを保とうと何も口に出さなかったカルサも思わず感情が昂り勢い良くその身体を起こした瞬間、レプリカの声が二人を止めた。

「ヴィアルアイ様を止めなければ世界は滅びます!」

レプリカの瞳は千羅を真っすぐ捕らえていた。

「邪竜は力ある者を狙う、統率者を失えば世界は滅びます。だからオフカルスは滅びたんです。」

苦痛の表情で全てを訴える。彼女は環明の記憶を持っている、それ故に鮮明にあの出来事が脳裏に焼き付いていた。

始まりの世界が滅びゆく姿をその目で、環明の記憶でレプリカは知っている。そんな彼女の言葉が重くのしかかってきた。

「皇子、それでも私の気持ちは千羅さんと同じです。皇帝の力を使おうとしておられるのであれば、それ以外の道を!」

「言うな、レプリカ!」

レプリカの言葉を遮りカルサは強く制す。思わず身体を引いてしまう程に彼からの威圧が感じられレプリカは言葉を止めた。

「千羅も、これ以上は口を慎め。」

歯を食い縛りカルサの言葉に従おうとする千羅の拳は固く強く握りしめられていく。まだまだ言いたいことがあると態度で示していたがカルサはそれに見ぬふりをした。

「俺は皇子としての役目を果たす。それがどのような形であれ選んだ道だ。分かってくれ。」

落ち着きを取り戻した声は殆どが千羅に向けた言葉だ。カルサは再びレプリカの前に座り、見上げるように位置した。複雑な表情を浮かべ今にも泣きそうなレプリカを黙って見つめる。

レプリカは頭を下げて謝罪をした。