貴未は竜を見たまま、マチェリラの視線に気付かず言葉を続ける。

遠い昔の記憶を呼び起こしているのだ。

ささやかだが自分の中で期待の芽が生まれたことに気付く、まさか彼も覚えていてくれているのかと期待してしまう。

「永と二人で草原のような広い場所で遊んでた時かな。傷だらけの竜を見つけたんだ。」

その時に二人で竜に時間を与え細胞の再生力を早めて竜の傷を治した、多分そういうつもりで力を使ったような気がすると貴未は続けた。

まだ自分たちの力がうまく使えない頃、何かの時間を操る能力だけが精一杯だったと言う。

「懐かしいな。あの時はよく分からないまま助けたい一心で力を使ったんだ。」

マチェリラは目頭が熱くなり思わず顔を逸らした。

泣かないように顔を上げて口元にも力を入れる。

「あの竜、泣いてたんだよな。」

マチェリラの中で鮮明に思い出せるあの時、貴未は小さな手で涙を拭ってくれた。

永は優しく撫でてくれた。

二人の純粋な気持ちは生きろと言葉にしなくても、生きることを前提にマチェリラを癒してくれたのだ。

それは大きな支えとなった。