月も出ない曇天の宵闇、虫すら寝静まる世界に、無数の人影が蠢く。

「すでに我々は標的の敷地内に入った。いいか、我々の目的はあくまでも標的の暗殺。スカーレットには構うな」

「「「はっ」」」

集団のリーダーらしき男の、極限まで抑えられた声に、幾人が短く返す。

その手には一様に、人差し指一本の労力で鉛弾を連続射出できる兵器――俗に、マシンガンと呼ばれる金属が、鳴りをひそめていた。

暗い暗い、芝生の上を、滑るように集団は移動していく。

洒落た大理石の噴水、闇にあってもなお青々しい芝、手入れのなされた花壇の列、無意味にカーブを描く煉瓦の小道、生け垣のアーチ……

およそ『豪邸』に相応しい壮観である庭を、機銃を手にした男達が、駆けていく。

――と、うちのひとりの足が、赤い線を遮った。

細い細い、赤いの光線。

途端に、警報が鳴り響く。