廉くんは何も言わずに優しく微笑んで部屋から出ていった。

それから何時間ぐらい経ったんだろう。


手に取った小説を読み始めたら止まらなくなってずっと読み続けていた。


―――コンッコンッ


ドアをノックする音が聞こえてハッと我に返る。


「はい。どうぞ」


遠慮がちにドアが開き予想通り奏太が入ってきた。


「久しぶり」


「来てくれてありがとう。
今日学祭だったの?」


奏太は制服のズボンに手作りであろうTシャツを着ていた。


「あぁ、話って?」


ドクンッ
私の胸が大きく脈打つ。


「この前はありがとう。
伊藤さんから聞いた。
私が発作になった時助けてくれたんでしょ?」


普通に会話出来るのはこれが最後なのかもしれない。
そう思うと涙が出そうになる。


「いや、軽い発作で済んでよかった。
それに俺からも話あ…」


「私からはそれだけ!
ごめんね忙しいのに。
もう帰っていいよ」


奏太の話を聞きたくなくて私は彼の言葉を遮った。


「あ、何か飲む?
って言っても水とお茶しかないけど」