私が言うと歌穂ちゃんは頷いた。


「学校終わってから来るからもうすぐ来ると思うんです」


歌穂ちゃんの言葉と同時に閉められたドアがノックされた。


「きっとお兄ちゃんです。はい、どうぞ」


――ガラッ


307号室に男の子が入ってきた。
黒い短髪の髪。
歌穂ちゃんにそっくりな目と鼻。


「兄の奏太(カナタ)です」


「あ、どうも…」


ぎこちなく私は挨拶をする。


「どうも」


相手も挨拶を返す。
その後、15分ぐらい2人は話していた。

どれくらいで退院できるのかとか何か欲しいものはないかとか。

その2人の光景を私はただボーッと見つめてた。


そのうち、歌穂ちゃんは検査や入院準備で疲れたのか寝てしまった。


「山中…幸未さん?」


「え?あ、はい。
そうですけど…」


歌穂ちゃんのお兄ちゃんに名前を呼ばれて慌てて返事をする。


「俺は奏太。妹の事よろしくな。
こいつ親と離れるなんて初めてだから悲しむと思うし」


「あ、うん。まかせて」


「小学生?」


「ううん、高1…」