「今日はこの後、点滴してね。
あと15分後には伊藤さんが行くはずだから」


「はい…」


私は素直にうなずいて診察室を出た。
ゆっくり長い廊下を歩いていく。

病室に入ってベッドに横になるとすぐに伊藤さんが来た。


「幸未ちゃん点滴するから。
力抜いててね」


伊藤さんは手際よく準備を始めた。


「ちょっとチクッとするよ」


そう言って針を私の腕にさす。

もう慣れちゃったよ。

点滴の透明な液体も、匂いも。


「奏太くん、最近来ないわね。
何かあったの?」


「高校の文化祭の準備が忙しいんだって。
電話もメールもなくて…」


「あら、だから最近幸未ちゃん元気なかったのね。
ちなみに病院内は通話禁止よ」


「わかってますよ…」


「早く、奏太くんに会えるといいわね」


伊藤さんはそう言い残して病室を出ていった。