それから結夏の高校の話を聞いていたらあっという間に日が暮れてしまった。


「あたし、そろそろ帰るね!」


「うん!また来てね」


病室を出るとき結夏が言った。


「…あのさ、移植の順番待ちする気は絶対ないの?」


「ない」


「そっか。変なこと聞いてごめん」


結夏が病室を出て行くとさっきまで賑やかだったのが急に静かになった。


『移植の順番待ちする気は絶対ないの?』


毎回、結夏や両親に耳にタコができそうなくらい聞かれる言葉。


移植すれば私の病気は治る。
そのためには移植の順番待ちの会員にならなければならない。

本当は病気がわかった時に登録するもんなんだけど…

私はそんなの嫌だから。


誰かの心臓…つまり死を待ってるみたいで嫌なの。


今更、登録してもどうせ順番が来ずに死ぬんだから。